息子の手作りエプロン
26歳の息子がいよいよ家を出て生活することになりました。引越しの準備をするにあたり彼が始めたのは、びっくりなことにエプロン作りでした。何年か前にエプロンを作ろうとして、このパンダの生地を買っていたのですが、私にとってはとっくに記憶の彼方になっていました。その布をちゃんと保存していた息子は手縫いでエプロンを作り始めました。仕事から帰ってくると手縫いでチクチク。毎日少しずつ縫っていきました。

新居の家事の時に使うためにエプロンを作ったそうです。引越しの準備がエプロン作りということに、自分の息子ながら面白く感じていました。自立を応援しなくてはならないことは十分承知していますが、家を出てしまうのは寂しくてしょうがないというのが正直な気持ちです。そんな複雑な気分をほっこりさせてくれた息子のエプロンでした。
「補強して」の一言
エプロンの形になってよかったねーと思っていたところ、息子から「手縫いだとちょっと弱そうだからミシンで補強してくれる?」と言われました。もちろんと引き受けましたが、息子の縫い目を消すことはできません。元々私は縫い目を見るのが好きなのです。自分が縫った刺し子の縫い目や刺繍の縫い目、娘が縫った美しすぎる縫い目、それら全てが愛おしく可愛く思えて、眺めながらニヤニヤしてしまうのです。ですから、息子が縫ったちょっとガタついている縫い目も可愛くて仕方がありません。そこで息子の縫い目の横をミシンで縫うことにしました。

伴走を思う
こうやって息子の縫い目に沿ってミシンをかけていると、なんだか伴走という言葉を思い出しました。伴走には文字通り「一緒に走る」という意味と、ビジネスや教育の用語として「サポートをしながら、目標達成を支援する、寄り添う」という意味があるようです。
私は決して良い母親ではなく、子どもたちに沢山迷惑をかけてきてしまいました。息子はシングルマザーの私を経済的にも精神的にも沢山助けてきてくれました。そして今はすっかり自立をして、私の助けなんていらなくなってしまいました。だから息子の人生の伴走者なんてものにはなれないのですが、それでもできることがある時には、必要がある時には寄り添いたいと思うのです。ちょっと離れた縫い目のような存在になれればいいなと願ってます。ちょっとだけ補強できる様な存在に。そのためには私も親として成長しなくてはならないのですが・・・
ミシンをかけながらちょっと寂しく、ちょっと嬉しく、ちょっとほっこりした気分を味わった一日でした。いやそれにしても、いろんな意味で可愛すぎるエプロンだな。
ちなみに、引越し当日まで息子が熱心に取り組んでいたのは、新居に飾るアート作品でした。ちょっとゴッホをオマージュした作品に取り組んでいて、これまたほっこりさせられました。うちの息子の引っ越し準備はかなり独特です。